思い出したのは、生まれて初めて女の人を、彼女をきれいだと思った、その時の感情。
それから、子供の頃に見たその横顔。
彼女は俺の母親の妹、つまり叔母だ。
俺の親父に何十年も片思いしていて、忘れる為に一度は他の男と結婚したものの、俺の母親が亡くなってから離婚して、それなのに親父は俺と同い年の若い女と再婚するという、哀れでしつこくて可哀想な人だ。
そして今、彼女は、俺の横で親父の結婚式に参列している。
見ていられなくて、その場から彼女を攫った。
そして抱きしめて、キスをした。
なぜ、あんなことをしたのか自分でもわからない。
でも、「なぜ」かは問題じゃない。
問題なのは、あなたが「返してくれた」ように感じたこと――…。
電子書籍(ただいま連載中!)
0コメント